「カヴェルに、お願いしたいんだが………」
「えっ!?マジで!?」
「あ、やっぱり正式に依頼出した方が良かった?」
恐る恐る希望を言えば、めちゃくちゃ驚かれてしまったので果てしなく後悔してしまう。
やっぱりそうだよな………面倒事だし、そもそもカヴェル程の冒険者に守ってもらうのに依頼も出さずにやろうなんて間違えてるよな………。
「いや違う違う!そうじゃなくて、本当に俺の傍に居てくれるの?」
「あんな話聞いたら家に帰るに帰れないし………なに?これだけ脅かしておきながら守ってくれねぇの?」
つらつらと出て来るのはクソみたいな可愛げのない言葉ばかりで、こんな自分が嫌になって凹んでしまう。
やっぱり同僚に頼んだ方が、良いのだろうか?
いやでも明日位に正式にギルドに依頼するか?
そんなに金は出せないからカヴェルは受けないだろうけど冒険者なら皆それなりに強いだろうし―――
そう思っていたらカヴェルが思いつめたような顔をして俺の手をがっしりと掴んだ。
「守る!守るよ!てか守らせて!金は要らないから!」
「お、おう頼むわ………」
勢いに呑まれるように返事しつつも、本当に良いのだろうかと気後れしてしまう。
でもまあ、本人が良いって言っている訳だし、良いんだよ………な?
「話纏まった?じゃ、ジルはちゃーんとカヴェルの傍に居なよ?」
「あ、ああ………。」
護衛対象が護衛から離れるのは、余計な手間しか与えないしな。
そう思いながら頷いた俺に、同僚は呆れたような溜息を吐いた。
何でだよ。
「本当に分かってるのか?俺今家に帰らずにカヴェルの家に行けって言ったんだけど。」
「へっ!?はぁ!?」
何でカヴェルの家に!?
そう慌てふためく俺に、同僚もカヴェルも再び溜息を吐く。
なんでだよ、溜息吐き過ぎだろう。
泣くぞこら。
「ジルの家は当然相手にバレてるんだから、いつ押しかけられてもおかしくないんだよ。」
「俺の家だったら当然俺自身が間取りも分かってるし、そもそも相手も俺の家を知らないだろうから時間も稼げる。」
同僚とカヴェルの言いたい事も分からない訳じゃない。
でも、本当に良いのだろうかと尻込みしてしまうのは、俺自身がカヴェルに絆されてしまっているからだ。
だって考えてもみろ。
こんな色男に会う度会う度可愛いだの好きだの言われてみろ。
幾らお世辞100%だって分かってもさ、絆されるに決まってるじゃんか!
「ジル。ジルを俺に守らせて………」
こんな色男からこんな風に懇願されて、絆されない奴が居るのか?
少なくとも俺は無理だ。
恋愛経験が少ないし、元々絆されていた訳ですし?
「うん………俺を守って………」
例えこれが騙されていたとしても、俺はそれでも良いと思った。
→/拍手