10

「………耀司くん、よーじくん。起きて。」
「………んん………」

あの後ちゃんと二人で風呂入って、二人で同じベッドで寝て、
そして今こうして康介に優しく起こしてもらって………何も起きてない筈もなくって思ったろ?
なぁんにも起きてねぇんだな、これが。
俺も康介も思った以上に疲弊してたらしく、風呂場でちょっとそういう触れ合いとかは確かにしたけど、
そこでもう体力使い果たしてベッドに着いた途端二人でぐっすりと寝てしまった。
んで、気が付けばこの時間。

「朝ご飯は?いつもどうしてる?」
「………食ったり食わなかったり………こーすけは?」

頭はそこそこ回ってるつもりだが、言葉にするまでに至らない。
康介は朝飯食う派なんだろうか?
俺は正直、朝から外回りがない限りは朝飯食わないからな………面倒だし………。

「僕も食べない時あるけど、耀司くんは営業でしょ?朝ご飯食べて体力付けないと………簡単なのだけど作るね。」
「んー………おにぎりがいい………」
「おにぎり?昨日も食べたけど、おにぎりで良いの?」
「おにぎり」

俺の頬や頭を撫でながら宥める康介の掌に擦り寄りながらグズる。
昨日食べたコンビニのおにぎりあんまり美味しくなかったし、鍋食い損ねたし、康介のおにぎり食いたい。

「うんうん、作ってあげるから、起きて顔とかを洗っておいで。まだ時間あるから、ご飯食べ終わってからお着替えしようね。」
「ん。」

康介は俺を優しく撫でてから、少し慌ただしそうに寝室を出た。
多分、飯作りに行ってくれたんだと思う。
申し訳ねぇなと思う半分、でも康介のおにぎり食いたい気持ち半分。
いや、半分所じゃなねぇな。
かなり食いてぇわ。

「………取り敢えず起きるか………」

スマホで時刻を見れば、普段起きてる時間よりも一時間早い。
が、飯食って準備したらのんびりゆっくりとした時間も取れるから良いな。
………良いな、それ。
本気で同棲してるみてぇじゃん。
まだ同棲まで至れてねぇけどな。

「あ。康介の歯ブラシ立て買わなきゃな。」

今は適当に俺が元々持ってた歯ブラシ立ての予備を使わせてるが、康介が選んだやつを使って欲しい。
その方が同棲してる感出る。
ま、誰とも同棲とかしたことないんだけどな。

言われた通りに歯を磨いたり顔を洗って………飯も食うし念の為と手も洗っておく。
えらい、俺。
後で褒めてもらおう。

「康介ー、顔洗った!」
「はーい!もうすぐ出来るよ!手、洗った?」
「洗った!」

ほらみろ!
言われる前にやれる俺は流石だな!



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