一緒にする買い物の時間は、思ったよりも早く過ぎてしまった。
食器にカトラリーに、ついでにあれもこれもと見たり昼食をとったりしていたらもう夕方で。
………夕飯が終わったら、もう帰さないといけない時間になる。
「取り敢えず荷物あるから一旦俺ん家行くかー。」
「………うん。」
帰り道の車の中でそう言えば、康介がひどくしょんぼりとした声色で頷いた。
なんだそれ、期待するだろ。
あまりにもしょんぼりとした言い方をするもんだから、帰したくなくなる。
「………帰りたくない?」
「………正直。帰りたくない。」
唇を尖らせてそんな可愛いこと言うもんだから、信号待ちなのを良い事にキスをする。
そもそも俺だってモールの中で手を繋いだりイチャつきてぇの我慢してたんだ。
公共の場だからな。
元々康介って、人目めちゃくちゃ気にするし。
車ん中だからまぁ確かに人目につくっちゃつくけど、密室だし一瞬だから多めに見てくれ。
「じゃあ帰るのやめるか?」
「仕事あるじゃん。」
「別の職場ならまだしも同じ職場だから一緒に行けばいいだろ。」
好きなだけ居たらいい。
寧ろ住みつけ。
上げ膳据え膳でもてなすか?
あんなハリボテみてぇなアパートに居るより居心地が好いと思わせれば住み着いてくれるか?
「な?お前ん家でさ、着替えと必要なのだけ取ってくりゃ良いじゃねぇか。」
そう考えれば、ぶっちゃげそれが一番良い気がしてきた。
会社も俺ん家のが近いし、広いし部屋数余ってるから康介のプライベートルームに出来るし、寝るのは昨日みたいに一緒に寝れば良いだろ。
………手ぇ出すのも、頑張って我慢するし。
「今日だけ、ね?」
「あー………おう。」
まぁ明日も帰りに俺の家に連れて帰りゃあ良いだけだから、取り敢えず返事だけしとくか。
手放したくない。
片時も離れていたくない。
寧ろ仕事中は会いに行きたいのも話しかけたいのも我慢してやってんだから、俺お利口さんな方じゃね?
「俺いい子だからごほーびくれ。」
「いきなり何の話!?………良いけど、僕の家に荷物取ってきてからね。」
康介も俺の家に泊まる予定でいてくれるという事実と、ご褒美くれるらしい事実に俄然やる気出て来た。
よし、ついでに手伝って褒美上乗せしてもらお。
「手伝う。」
「あら、いい子だね。」
クスクスと康介が笑う声が狭い車内に響く。
見通しの良い一本道、次の信号はまだまだ先で。
すっげぇキスしたい、が、安全運転を優先して自分の欲望を我慢してる俺は本当にエラい。
「あ!耀司くん、夕飯うちで食べよう!」
「良いけどどうした?」
夕飯を康介の家で食べるってことは、康介の家に行くってことだから俺としては願ったり叶ったりだ。
今まで駐車場までで終わりだったのに、泊まってくれる上に招いてくれるとかもはやそれそのものが褒美だろ。
「冷蔵庫の食材、賞味期限今日までだから全部使おうって思ってたの。ごった煮お鍋で良いなら、食べてって。」
「食う。」
康介の提案はざっとしたものだったが、
それでも普段めんどくさいからコンビニ弁当ばかりと言っていた康介が俺の分まで作ってくれるんだから、嬉しいことこの上ない。
「じゃあ簡単に作るね。」
「おう。その間適当に荷造りしてて良いか?」
「いいよー」
良いのかよ。
俺がお前の荷造りして良いのかよ。
全部詰めて空っぽにしてやるぞ。
しないけど。
でももう三泊位しても大丈夫な位には荷造りしてやるから覚悟しろ。
「寧ろ助かる。いい子だね耀司くん、ありがとう。」
「だろ?もっと褒めろ。」
下心ありありだけどな。
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