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なんだかんだあっさりと昼寝をして、次に起きた時はもう日が落ちて夜の手前の状態になっていた。
結構寝たな………
未だに俺の腕の中でスヤスヤと眠る康介は起きる気配もない。
どうせ明日も一日一緒に居る訳だし、もう少し寝てもいいかもしれん。
あー、だがそうするにはもう肌寒いな………せめて寝室に移動するか?
風邪引かせる訳にはいかないしな。

「康介、ちょっと起きろ。」
「んんっ………」

揺り起こすのは可哀想だから、額やら頭頂部やらに何度もキスをして起こしてみる。
意外とされてること分かるんだよな、これ。
案の定もぞもぞと俺の腕の中で動きながら、康介がゆっくりと不満そうな声色を立てながらぼんやりと目を開けた。
子供みたいだな。
可愛い。

「なんじ………?」
「六時半。まだ寝てても大丈夫だけど、寒いから寝室行かねぇ?」
「ねる………」

ガッサガサの声で要求だけを訴えながら、ぴったりと俺に抱き着いてくる康介は可愛い。
可愛いが一度寒いことを自覚すると、ブランケットと康介の体温だけだとマジで寒い。
とはいえ多分コイツ動く気ねぇだろうなぁ………

「晩飯どうする?」
「いらない、ねる」

分かりきった質問をしてみれば、寝ぼけた言葉遣いのままバッサリと切られる。
あまりに容赦ない切り方に、思わず笑いそうになりながら康介をこれ以上起こさないようにゆっくりと身体を起こす。
肌寒さを感じたせいか一瞬だけ身動ぎをしたが、目は不機嫌そうに固く閉ざされたまま。

………案外寝穢いのな、コイツ。
まあ俺に昼寝を教えてくる位だから、当然といえば当然か。
そう思いながら康介を横抱きにして運ぶことにする。
相手は成人男性だが、まあイケるだろ。

「………うわっ。」

そう思いながら抱き上げてみたが、流石に成人男性。
そこそこ重い。
………が、予想よりも軽くて思わず声が出る。
コイツ食う時は俺より食うクセに、その質量はどこに行ってんだ?
そして結構な振動なのに、よく寝れるな。

危険なことなんざ何一つありませんって顔して腕の中で寝られると、腹も立つが呆れもする。
俺が寝てる隙に襲うような男だったらどうすんだ。
男心分かってなさすぎだろ。
もっと危機感を持て危機感を。

「んっ、よーじくん?」
「起こしたか?」
「いっしょねよ?」

ガッサガサの可愛さのかけらもねぇ声で、そんな可愛いこと言ってんじゃねぇよ!
お前を食いたくて仕方ねぇのに大人しく待てしてるワンちゃんだがな、限度っつーもんがあるんだ!
襲われたらどうすんだ!
襲わねぇけど!

「………正真正銘の恋人になった時は覚えてろよ。」

決意というには小さな声で。
俺はそう呟いて康介の横に寝転んだ。



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