ゆかりちゃんと、ゆっくり歩く。
歩き慣れた街並みなのに、可愛いゆかりちゃんと一緒と言うだけで新鮮な気持ちになる。不思議だね。
「まだ居たい?」
繋ぐ手に力を込めて、離れたくないのだとアピールしたら、ゆかりちゃんはそれを察して私の顔を覗き込みながらそう言ってくれた。
エメラルドみたいにキラキラとしたゆかりちゃんの目を至近距離で見ていると、私まで引き込まれそうになってドキドキが止まらない。
「いたい。」
ねだるようにそう言えば、ゆかりちゃんの手にも力がこもる。
そのまま優しく手を引かれ、向かった先は絵に描いたみたいに下品で汚いラブホテル。
「いや?」
ううん、最高。
慣れた手つきでパネルを操作して部屋を選ぶゆかりちゃんに、私は抱きついてキスをしながらそう答えた。
小さめの店内BGMを聴き流して、キスを繰り返しながらエレベーターの中に入れば、
単純な私の脳みそはゆかりちゃんが好きって気持ちばかりであふれていく。
きっと、たくさんきもちいいことをくれるの。
―――………!………!!
ふいに、ざらりとした感覚が頭の中を駆け巡る。
知ってるけど知らない人の声が、後頭部に響いて気持ちが悪い。
「しずくちゃん」
込み上げてくる吐き気に思わず暴れると、ゆかりちゃんが悲しそうに私の名前を呼んだ。
ちがうの、ゆかりちゃんがイヤなわけじゃないの。
「可愛いよ」
パチンと脳みそが弾けた気がして、気が付けば視界に映るのはゆっくりと閉まっていく趣味の悪い扉だけ。
あとは、もう、わからなく、て―――
「橋を越えないでくれてありがとう。」
ただ、わたしは、せかいで、いちばん、
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