「………さて、本番するか。」
「だね………思った以上に時間掛かったし、疲れたけど頑張ろ!」
秋元と課長を無事に見送って、俺と康介は二人揃って伸びをする。
今からするのは荷造りだ。
俺と康介、二人一緒に住むために。
「康介。」
「んー?」
気持ち良さそうに伸びをしたままの康介を呼んで、軽く触れるだけのキスをする。
子供の戯れみたいなそれに、嬉しそうに笑ってくれるからたまらない。
もっと見たい。
毎日、たくさん、ずっと。
「家電、テレビデオだけで良かったんだよな?先に運ぶな。」
「うん、お願い!僕その間に食器詰めてるね。」
殆ど家具が無い部屋で、康介が唯一どうしても持って行きたいと熱望したのは劇場限定やチケット限定のグッズ達と………テレビデオだった。
分かる。俺も持って行きたい。
そこまで………というか、全く広くない部屋を予め考慮していたからだろう、
肝心なグッズ達もそう多くない上にカトラリーとかタンブラーとかそういう実用的なものが多く、荷造りも今日一日で終わりそうではある。
まぁ、逆に捨てる家電とか家具とかの処分が大変になるだろうけど。
「あ、でも階段気を付けてね。てかそこまでは一緒に運ぼうか?」
「いや、この大きさなら大丈夫だろ。」
試しにコンセントを抜いて抱えてみるけど、
ブラウン管テレビ特有の重さは確かにあるものの、ふらついたり踏ん張れなかったりする位じゃない。
本格的に抱え直して、扉だけ開けてもらう。
そこそこ重さがある分、逆に安定して持てるな。
まぁ、階段がクソボロいから下りるまでは全く油断できんが。
「………っしょと。」
流石に開けっ放しの車に積んだ頃にはだいぶ腰に違和感が出たが。
慎重に下り過ぎたか。
けど下手に揺らして中身に影響させんのも嫌だし、大見得を切った以上コケたら洒落にならんしな。
「さて、手伝いに行くか。」
テレビデオという(俺達的には)貴重品を積み込んでしまったので面倒だが扉を閉めて施錠もしっかりする。
これを失うのはマジ凹む。
つか思ったよりもテレビデオがそう大きくなかったから、予想以上に詰め込めそうだな。
元々、余ってた一部屋を康介のプライベートルームにする予定だったし、いっそ捨てる予定だった家電ごと全部持って行くか?
飲み物とかお菓子とかもその部屋に置いてても良いし。
「なぁ、康介ー!」
「あ、おかえりなさい。どうしたの?」
良いことを思い付いたという衝動のまま、軽やかに階段を上り康介の部屋に転がり込む。
早速提案して褒めてもらおう。
いっぱい頭撫でてもらおう。
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