結局、秋元は今度の休みに俺と課長立ち会いの下、康介の家に仕掛けた機械類を全部外すことに合意した。
その後は知人としての距離感を保つようにとは言われているか本当にちゃんとするのか、
それは甚だ疑問だったからちゃんと確認するまでは康介は俺の家に居ることになった。
………なんだそれ。
終わったら康介が自分ん家帰らなきゃいけねぇみたいな言い方。
「………耀司くん、怒ってる?」
「怒ってない。」
家に帰って即ソファに座り込んだ俺に、康介が困ったように眉根を寄せながらそう言った。
怒ってない。
それは本当だ。
ただ………
「なぁ。」
「ん?」
「秋元の件が片付けば、帰んの?」
完全に不貞腐れた状態でそう言って、隣にあったクッションを抱え込む。
ますます困った顔をする康介の顔が見たくなくてクッションに顔を埋めてみるも、それでもやっぱり反応は気になるから耳をすませてしまう。
ダッセェ………。
何がって決まってるだろ。
俺がだよ。
「耀司くんは、僕とずっと一緒に居たい?」
「居たい。」
居たいに決まってる。
だから言い方悪ぃが秋元の件はこれ幸いだと思ったのに、
あっさり解決したから俺の傍は安全で居心地が良いってことを分かってもらえてないままだし。
「あんなセキュリティクソみたいなアパートに帰すのも嫌だし、俺を置いて行くのもヤダ。」
簡単に他人に侵入されちまうような家に戻すのはまた同じような問題が起きるだけだ。
それを理由にしたらあの家から引越しはするんだろうけど、俺と住むことはないだろう。
………お試しの恋人だし。
「一緒に住みたい。」
それでも、俺はクッションに顔を埋めたまま素直にそう言った。
誰かと一緒に住みたいとか、マジで無理だと思ってた。
だというのに、俺はほんの二ヶ月しか共に過してない康介と一緒に暮らしたくて仕方なくなってる。
………振られるかもしれねぇのにな。
「ねぇ、耀司くん。クッション退けて。僕を見て。」
「………ん。」
本当は嫌だけど、言う通りにクッションを脇に置いて顔を上げれば………
困った顔のまま、良い子だと頭を撫でられる。
嬉しいけど、複雑。
こんなん、ただ俺のワガママを宥めてぇだけじゃん。
「一緒に暮らすの、大変だよ?」
「そりゃ分かってるよ。だから俺今まで誰とも同棲してなかった訳だし。」
「自分の好きな時間の使い方も出来ないよ?」
「知ってる。なんでそんなの聞くんだよ。」
もう完全に子供のワガママだ。
クソダセェ上にウゼェってのは分かってるけど、しょうがねぇじゃん。
今更なことばっかり言われるし、嫌なら嫌って言えよ。
「大事な事だからだよ。」
「なんの?」
「一緒に暮らしたいんでしょ?」
俺の手をそっと握る。
その顔はもう、困ってなかった。
寧ろ、照れたように笑っていて………
「同棲してくれるなら、擦り合わせしたい。耀司くんばっかり我慢させるのは嫌だし、僕ばっかり我慢するのも嫌だから。」
頬を掻きながらそんなことを言うものだから、たまらなくなって抱き寄せる。
同棲って言った、言ってくれた。
恋人だと思ってくれてる。
康介も、一緒に居たいと思ってくれてる。
「好き。」
「うん、僕も好きだよ。」
縋るように抱き着く俺の頭を、康介が優しく撫でる。
その温かさが、愛しくてたまらなかった。
→/拍手