「詳しく聞こうか。」
なんて。
銀山はそう言って余裕ぶって構えていたが、
説明するより早いからと録画データ聞かせてやったら顔が引き攣りだし、最終的に頭を抱え始めた。
分かる。
気持ち悪ぃよな。
「………え?秋元ヤバくない?これガチめなストーカーじゃん………しかも勘違い型………どうすんの………」
「取り敢えず同時進行で東堂課長には相談してる。」
メッセージでだが、もう課長には事情を話してある。
康介と付き合っていたことは驚かれたが、秋元のヤバさにもっと驚いたらしく………
解体の難しい爆弾を持ち込むなと嘆きつつも、康介に対するケアはしっかりしてやれと言われた。
そして俺も康介も初めて知ったんだが、うちの会社同性愛OKなのな。
「お前と藤代が付き合ってるって噂は秒で流せる。信用されるかは別にしてだが、まぁ堂々と連れ立って居たら良いんじゃねぇの?ただ………」
「ただ?」
「この手のタイプって、逆上する可能性があるんだよなぁ………藤代に対して変な幻想持ってそうな口振りだし………」
………確かに。
俺としては牽制出来るし、万が一【康介の恋人は自分だ】と主張した所で、周りが信用することもなくなる。
一番怖いのはそこだ。
万が一俺が牽制しなかった場合、事実はどうであれ先に口に出した方が真実になるし、
周りからはまるで康介が浮気しているように見えてしまう。
「………変な幻想って?」
そこに引っかかるな、そこに。
怪訝そうに首を傾げる康介に、俺と銀山はそっと目を見合せて………スルーすることにした。
説明するのもめんどくせぇ。
「だが他に方法があるか?」
「まぁ、無いね。ストレートに迷惑だって藤代が言った所で、蘭に言わされてると思い込むだろ。」
それは俺もそう思う。
100%そう思い込むだろうし、なんなら声高らかに言うだろうから康介が直接アイツに物申すのは却下だ。
「でもだからって当事者の僕が何もしないのは………」
「当事者だからこそじっとしてろ。動かれると寧ろ邪魔だ。」
「そうそう。この手のキチガイは周りには任せてじっとしておく方が吉。」
頼むからじっとしておいてくれとすら思う。
守られてるばかりが嫌だし落ち着かないだろうということは分かるが、何かあった時に後悔するのは周り………つか俺の方だ。
そのリスクは極限まで下げたい。
「取り敢えず、噂流しておいてあげる。それが狙いなんだろ?」
「ああ」
「課長に相談してるなら秋元はそっちに任せてた方が良いだろうね。いやー、明日の秋元の顔見ものだなー!」
楽しみだという雰囲気を隠そうともせず、にっこにこの笑顔で銀山はそう言った。
言い出したのも思いついたのも俺だけど、そう簡単に上手くいくもんかね?
→/拍手