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【また今度】を告げられてからもう一週間近くになるが、結局その【今度】はいつ来るんだと言えないまま。
とはいえこれは康介が望むタイミングでしかやって来ないから、俺がぐだぐだ言えば寧ろ遠ざかるだろうと開き直って黙っていることにした。
物分かりの良い男のフリをすれば、寿命が伸びるだけじゃなくて四ヶ月目以降の男になれる確率も上がるからな。
往生際は悪いんだよ、俺は。

「耀司くん、耀司くん。」
「んー?」

いつものように公園の駐車場でイチャついてると、康介が何かを思い付いたのか康介の顔中にキスしてた俺の唇を舐めて訴え始めた。
名残惜しいが、何を思い付いたのかが気になるので俺も康介の唇を舐めて少しだけ身体を離す。
少しだけ、なのは康介がガッツリ抱き着いていて離れられないからだ。
………と、いう言い訳。

「耀司くんはお家デートとおでかけデートどっちが好き?」
「あ?」

いきなり、というか今更何だその質問。
今更マジで何の確認なんだ?
アレか?
家デートし過ぎて身体目当てだと思われたか?

「いつも僕の都合でお家デートにしてもらってるけどさ、おでかけの方が良い?」

………僕の都合?
家デートは俺の都合というか俺が半ば無理矢理連れ込んでたと思っていたが?
マジで何の話だ?

「俺の都合で家デートだと思ってたが?どした。」
「んー………んー………」

言いづらそうにモゾモゾと動きながら、俺の肩口に顔を埋めながら何やら唸っている。
何か言われたのか?
いや、でもコイツと付き合っていることちゃんと隠せている筈だ。
ということは誰かが何か言ってるのを聞いたとか?

「今日さ、給湯室で………」
「ああ。」
「耀司くんが、彼女連れ歩くの好きなのに、今回の彼女は隠してるよなって話してるのが聞こえて………」

誰だよそんなこと言った奴。
連れ歩くってなんだよ、犬猫か?
まぁ確かに今までの彼女はよくデートは外でしてたし、有名所ばかり連れて行かされてたから同僚と鉢合わせしてたからな。

「確かに外デートしてたが、殆ど向こうの都合だ。俺が行きてぇって思った所なんてほぼねぇよ。」

たまにリクエスト出せば却下されてたしな。
その度に揉めてたらもう言うつもりもなくなってくるのでもう基本的に言いなりになるし、
どっちかと言えば俺が女をじゃなくて、女が俺を連れ歩いてた状態なんだよ。
だから………

「どっちかと言えば康介とゆっくり家で過ごした方が好きだ。でも康介が外デートしたいなら、いくらでも付き合う。」

きっぱりと、それだけは告げる。
正直な話し、俺に昼寝の楽しさを教えた康介には是非とも責任取って欲しい所だが、
家デートに飽きたのならいくらでも外デートに行くし、買いたい物があるんだったらいくらでも買ってやりたいと思う。
寧ろお前金出すな。俺が出す。
その資金元手に俺ん家に越して来たらマジで最高なんだが。
どうせ部屋余ってるし。

「僕もお家デートが良い………耀司くんとゆっくり映画観たい。」
「俺も。今週は?どうする?」

コイツの腕ん中心地好すぎて毎回寝てるから映画をまともに観れた記憶は無いけどなと思いつつ頷き、気になっていた今週の予定を聞いてみる。
居心地がマジで良いから毎週付き合わせているが、今週もし予定があるならそっちを優先させてやらんこともない。
流石にそこまでは言わないが、そんな気持ちを込めながら俺は未だに首筋に顔を埋めている康介を少し力を込めて抱き締める。

「土曜日がいい。」

………つまり、今回も泊まらないということだ。
日曜日ならせめて次の日の仕事を理由に無理矢理でも泊めさせたんだがな。
俺の家からの方が会社近いし、送れるし。
でもまぁ、今週もデートがあるだけマシか。

「あと………」
「ん?」
「あと日曜日も。」
「は?えっ?」
「じゃあね!今日もありがと!後は歩いて帰る!」

思わせぶりなことを言い逃げしようとする康介だったが、体格差も力の差も体制も何もかも俺に有利なので抜け出せる筈もなく。
もがもがと足掻く真っ赤な顔になった康介を抱き込んで、ついでに足で押さえ込む。
こいつ………マジでなめてんのか。
可愛いが過ぎる。

「泊まる?」
「泊まりたい………けど、」
「けど?」
「えっちなのはまだダメ。」

めちゃくちゃ小声で言われた言葉に、逆に期待が込み上げてくる。
【まだ】ってなんだよ、【まだ】って。
OKする前提じゃねぇかふざけんな可愛い。

「………なぁ、康介。」
「………なに………」
「キスしていいか?」

いや、別に返事なんてなくてもキスするんだけどな。



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