4-2

『後で、予定の無い休みの日を送ります。その後、都合のいい日を教えてください。』

勢いに流されて中途半端に出した勇気は、結局メッセージを送っただけで尽きてしまって。
その直後に来た返信は怖くて見れなかった。
しかもご飯食べた後に送ろうと決めた休みのシフトも送れていない。
しかもご飯の最中にもブルブルと震えていたスマホに、
見てやらないのかと虎太朗くんからも催促されてしまいすごく居た堪れない気持ちになってしまう。
そんな気持ちを誤魔化したくてテンパってしまった俺は、何を思ったのか虎太朗くんに服を選んで欲しいと頼んでしまった。
まだ行けるかどうかも分かってないのに………。
いや、未読分のメッセージ見たら分かるんだろうけど………。

「まともな服持ってねぇのな。同じのばっかりじゃん。」
「………大学とバイト以外出掛けないから………」

精々行くとしてあの寂しい映画館くらいだと言った俺に、虎太朗くんは俺のワードローブを見て溜息を吐いた。
ワードローブって言ってもホームセンターで2500円くらいで売ってた、ペラペラの布で覆われたワードローブとは名ばかりの安物だけども。
ちょっと引くと破れてしまいそうな布を手慰みにしながら、虎太朗くんはうんうんと唸る。

「俺の要らなくなった服やろうにも、サイズがなぁ………」

確かに俺は虎太朗くんより身長高いけど、虎太朗くんの方がスリムだ。
そして仮にそこをクリアしたとしても、悲しいことに虎太朗くんの方がずっとずっと足長いしな………理想的なモデルさん体型………

「取り敢えず今度服買いに行くか?」
「うーん………そうしようかな……虎太朗くん手伝ってくれる?」

まだ遊んでもらえると決まった訳じゃないけど。
それでも仮にあんなキラキラした人と一緒に歩けるなら、ダサい格好だけはしたくない。
あの人に恥をかかせたい訳じゃないから。
とはいえ俺はセンスが無いので、俺一人で行ったところで現状と同じ結果になるだけだ。
なのでダメ元感覚で虎太朗くんにお願いしてみれば、
一瞬だけただでさえ大きな瞳を更に大きく見開いたかと思えば、今までにないくらいの笑顔で了承してくれた。

「任せろ!」
「の、ノリノリだね………」
「ああ!毎日の飯のお礼が漸く果たせる!」

お礼っていっても材料費ちゃんと貰ってるし一番欲しいだろうお昼は作ってないんだが、でも今回ばかりは好意に甘えておこうと思う。
精一杯オシャレなの選んでも、今までと同じような感じになる未来しか見えないからね!
マネキンコーデもいいかもしれないけど、あれは実際着てみると思ったのと違うとなってしまう確率が高いからな………
マネキンを選ぶセンスも必要だ。

「いつ行く?つーか連絡先教えて。考えたら俺お前らの連絡先知らないわ。」
「なんだかんだほぼ毎日顔合わせてるもんね。」

用事とかご飯のリクエストがあれば大抵直接言うから、シェアハウスのメンバーとは誰一人連絡先を交換していない。
空いた時間にバイト入れまくってる俺は別として、
わりとみんな時間の使い方合ってるけど一緒に出掛ける訳じゃないから必要性を感じてないっていうのも理由だったりする。
でも今回はもしもはぐれてしまった時に必要だろうから、一応交換しておこう。

「俺の方が時間に融通効かせれるから、陽斗の次の予定空いてる休み教えて。」
「えっと、次は………」

お互いに予定を合わせて出掛けるなんて、久しぶりすぎてちょっとドキドキする。
ましてやまたしても陽キャ属性の人とだなんて………一生分の幸運使い果たした気分。

「さて、どんな格好にさせてやろうかなー。陽斗背も高いから、わりと似合う服多そう。」

ニンマリと楽しそうに笑う虎太朗くんに、思わず口の端が引き攣ってしまう。
楽しそうに部屋に帰っていく背中に水は差せないけれども、
でもどうか手加減して欲しいと思ってしまうのは、けしてワガママなんかじゃない筈だ。



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