2-3

結論として、コウジは俺の家に暫く居候することになった。
自宅が知られてしまった時一人で居るコウジが危ないから、コウジの両親が仕事先の海外から帰って来れるまでは俺の家で過ごす。
コウジもコウジの両親も恐縮しきっていたけれど、
正直こういうことが恐ろしい事態を招くんだということは、吉塚の件で俺の高校の生徒や保護者皆が知っていることだから。
だから俺達を安心させる為にもと、コウジの両親に頼み込んだ。
コウジの両親も、出向先の国のニュースでもストーカーが如何に恐ろしく理解できない思考かは分かるから甘えさせて欲しいと、最終的に頷いてくれた。
ただ事情が事情なので、一度日本に帰ってきてくれるらしい。
それまでは、俺の家でって訳だ。

「ただーし!誠也とは部屋は別だからな!」
「兄ちゃんうっさい。」

ぎゃんぎゃんと喚く兄ちゃんをピシャリと跳ね除け、俺はコウジの手を取って部屋へと戻った。
俺とコウジの関係を反対するのは勝手だが、だからってサボりまくった結果の大学中退現ニートで、
オセロクソ雑魚の父さん以上のクソ雑魚のクセにコウジの部屋に口出すとは何事か。
そういうのはせめて俺にオセロに勝ってから言え。

「お兄さんは相変わらずだなぁ。」

コウジが困ったように笑うけど、実はコウジ自身は兄ちゃんを気に入ってるのは知ってる。
躾のなってない小型犬みたいにぎゃんぎゃんと吠える兄ちゃんを、ニコニコといなしながらも相手をしているのだから。
本当に嫌なら、俺の家族だろうがコウジはとっとと話を切り上げて相手になんてしない。

「知らない。」
「ヤキモチ?俺には誠也だけだよ?」

部屋に着くと同時に、コウジをベッドに押し倒す。
正確には押し倒されてもらってるんだけど、それはそれ。
靴下をちゃんと脱いで、コウジの上に馬乗りになる。
こんな時に何を呑気なと呆れられるかもしれないが、俺はバッチリとヤキモチを妬いていた。
だって、コウジは兄ちゃんを構う時ちょっと楽しそうだ。

「分かってるけど、でもヤダ。妬くもんは妬く。」
「あら可愛い。お父さん構うのは良いけどお兄さんはダメ?」

コウジが器用に靴下を脱ぎながらそう聞いてくる。
確かに、コウジは父さんと暇さえあればオセロしてる。
なんなら下手の横好きなクセに忖度嫌いな父さんを、オセロでぼろ負けさせて寝るのがもはやルーチンと化している。
父さんとの対局中は暇なので主にコウジの膝の上でスマホ弄りながら待ってるんだけど、だからといって妬くことはない。
違いは何かと言われたら、一つしかない。
独身の若い男か、既婚のおっさんか。

「ダメ。」
「ふふっ、可愛いなぁ。」

腕でバツを作る俺に、コウジは楽しそうに笑う。
………少しは元気が出ただろうか。
でも俺のモヤモヤは改善されてないので、わしゃわしゃもしゃもしゃとコウジの頭を撫でて発散する。
ふわふわの、ちょっとだけ癖の跳ねた猫っ毛が可愛いから好き。

「俺も妬くからおあいこだね。」
「妬くの?誰に?吉塚?」
「それは大いにあるけど、後は姉さん達にかな。」

適当に言った吉塚がまさかの大当たりとは。
それにコウジのお姉さんって………全員既婚者だし、俺どっちかといえばあのパワフルさにもみくちゃにされてるだけだけど。

「誠也が可愛いのは当たり前だし、姉さん達の勢いに圧巻されるのはすっごい分かるけど、
やっぱり姉さん達に可愛がられる誠也見るのはモヤモヤするよね。俺の誠也なのにってさ。」

お返しとばかりに俺の頭を丁寧に撫でながら、コウジはそう言って唇を尖らせた。
でも俺よりも大きくて綺麗な掌がいつもより熱くて、きっと照れてるんだろうなといることは十分に伝わる。
コウジは本当に俺を大切にしてくれる。
あまりにも大切にしてくれるから、ちゃんと自身を律しないと俺調子に乗りそう。
実際小学校の時に調子に乗って、中学生で文字通り痛い目見た訳だしな。

「そうだよ。俺はコウジのだし、コウジは俺の。」

でもそれだけは絶対に揺るがない、揺るぎようもない事実だ。
くだらないヤキモチ妬き合って、それでも俺達はお互いだけの存在なんだ。
これから先に未来が広がって、大学だったり就職だったりで人間関係が変わったとしても。
勿論その関係に胡座をかくことは絶対にしてはいけない。
ギュッとコウジの指に自分の指を絡めて握り締める。

「で、結局俺はここで良いの?」
「良いも何もいっつも俺の部屋じゃん」

まだ言うかと今度は俺がムッと唇を尖らせる。
泊まる時いっつも俺の部屋なのに、今更何を遠慮する必要があるのか。
確かに一泊や二泊の話じゃないとはいえ、だからってなんでコウジと一瞬に寝ちゃダメなんだよ。

「誠也」
「なに?………んっ」

俺の頭を撫でていた方の掌が、いつの間にか俺の太腿まで降りてきていやらしく撫で上げる。
えっちする前と同じ動き。
そう理解しただけで、俺の身体は単純だから反応してしまう。

「声、ガマンできる?俺、誠也と引っ付いて寝てるのにエッチなことガマンするのちょっと無理かも。」

するりと、コウジの手がどんどん俺の尻に近くなっていく。
期待から自然と呼吸が浅く早くなる。
まだみんな起きてる。
お風呂にだって入ってない。
でもこんな触られ方したら、俺だってガマンできない。

「こえ………」
「ん?」
「こえ、ガマンしたら、シてくれる?」

俺の言葉に、コウジは楽しそうに目を細めた。
頑張るから、シて欲しい。
馬乗りになったまま、後ろ手に少し大きくなってるコウジの股間を撫でる。

「じゃあ、練習しよっか。」

熱の篭った声でそんなこと言われたら、期待するしかないだろう?



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