5-4

「コウジ………んっ、じゅん、びっ………」
「うん、分かってる」

家に帰って、母さんに弁当箱返して部屋に行く。
そこまでは普通だったけれど、部屋のドアを閉めた途端にコウジから腕を引かれて、文字通り噛みつくようなキスをされる。
恋人のキスって舌を絡めるだけだと思ってたけど、歯や上顎を舌で撫でられたり、俺の舌を吸われたり。
息の仕方も上手く分からなくなって頭がぼんやりとするけど、それ以上に気持ち良過ぎて訳分かんねぇ。
でももっと、もっと欲しい。

子猫がミルクを舐めるように、俺は必死にコウジの舌を追いかけ舐める。
コウジみたいな技巧は何もない、ただ俺だけが満たされる動き。
それなのにコウジは嬉しそうに目を細めると、キスをしながらゆっくり俺をベッドへと押し倒した。
このまま食われるのだろうか。
それでも良い。
全部あげたい。
コウジに、俺の全部。

ギシリと軋むベッドで、コウジの首筋に腕を絡ませて必死に縋りつく。
昨日までは友人だったけど、今日から恋人。
恋人はコウジが初めてだけど、高校生だから分かる。
音を立てて離れたコウジの唇が、今度は舌を滑らせながら首筋に降りていくその意味を。
鎖骨の辺りに感じる小さな痛みも、荒い息をあげながら俺を見つめるコウジの瞳の中に隠された、熱の意味も………

「誠也、気持ちイイ?」
「きもちぃ………」
「好き?」
「すき、すき………コウジ………」
「腰が揺れてる………誠也、可愛い………」

ギラギラとした雄の瞳が、俺を喰らおうと見つめてる。
食べて欲しいと、素直に思える。
何の嫌悪も迷いもなくそう思ってしまう辺り、俺は潜在的に抱かれる側のゲイなのだろうか?
それともコウジ相手だから、そう思うのだろうか?
分からない。
分からないけれど、もっともっと欲しい。
それだけは、分かるから………

「ちょうだい、ちょうだいコウジ………」
「うん。あげたいけど、ここじゃあ我慢ね。」

ヤダ、なんで?
コウジだって、見て分かる位に反応してるのに。
やっぱり俺じゃダメなの?
男だから、ダメ?

「あー、泣かないで誠也。ここ誠也のお家だからお母さん居るし、ゴムもローションも無いだろ?」

強烈過ぎた快感を散らしきれなくてとうとう泣き出した俺に、コウジは宥めるように頭を撫でながらそう言った。
確かに母さんが居る。
コウジからのキスで咎が外れたみたいになったから、何の準備もしてない。
ネットでちょっと齧った程度の知識があるだけだ。

「俺が抱くにしても抱かれるにしても、誠也とそうなりたかったから家に準備してあるし、俺一人だからいっぱい声出しても大丈夫だよ。」

するりと、コウジの手が俺の脇腹を撫でる。
思わず声が出そうになって手で塞ぐけど、きっと出せたらもっと気持ち良くなれるかもしれない。
でもみっともないって思われないだろうか。
うるさいって、言われるだろうか?

「ひぅっ!」
「可愛い………誠也のその可愛い声、俺もいっぱい聞きたい………どうする?」

舌を耳朶に差し入れられて、思わず声が出る。
そのまま腰に来るような甘く低い声でそう問われたら、もはや頷くしかない。
だらだらと期待に零れる唾液を飲まれる羞恥よりも、俺は未知の快楽に溺れる瞬間で胸がいっぱいだった。

「だいて、だいてコウジ………」

俺をコウジの、コウジだけのオンナのコにして。
平凡顔の俺が言うにはあまりにもおかしなセリフだったが、熱に浮かされ過ぎてそんなおかしさにすら気付けない。
ギュッとコウジに抱きついて、強請る。
どうせ三日あるからゲーセンは今日じゃなくて良いし、なんならチャンスはいっぱいあるだろうからまた今度でも良い。
とにかく俺はコウジが欲しくて欲しくて仕方なかった。
自分自身ですら一回も暴いたことない筈の臍の下が疼くのは、きっと気の所為じゃない筈だ。

「たまんねぇ………一回抜いてから、準備しよっか。」

声は我慢しててね。
コウジはそう言って俺の制服のズボンに手をかける。
俺以外触れたことのない場所に、大好きな人が触れる。
それも当然未知の経験で、俺は翻弄されながらも言われた通り声を必死に堪えた。
まるで雪崩のような快感は、翻弄される内に終わってしまったけれども、
覚えている範囲で言えば俺は相当なドMなのかもしれないという事と、コウジは間違いなくドSだという事だった。



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