「なんでぇ!?ちぃちゃん俺を置いて行かないんでしょ!?」
「だから言い方。学校行くだけ。」
ひんひんと泣く渡邊さんの口に取り敢えず朝ご飯のジャムパンを突っ込みつつ、鞄を手に取った。
ちなみにオーナーから渡邊さんの家に居るように厳命されて早一週間。
毎朝これである。
そしてその間警察はもちろん、教師陣からの事情聴取もなく、
そもそも渡邊さんの家からだと電車ではなくバスでの通学の方が楽だからそっちに変わったので、あのイケメンくんともエンカウントする事なく通学できている。
楽なのは気付いていた。
けれども思ったよりもずっとずっと、呼吸がしやすい。
何一つ気にすることなく歩けるのは、こんなにも幸せな事なのか。
「渡邊さん、行ってきます」
「………行ってらっしゃい、ちぃちゃん。早く帰ってきてね。」
なんなら早退しても良いよという言葉はスルーだ。
学生の本分も全うできないなんて、渡邊さんのお嫁さんには相応しくないのだから。
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