或る殺人鬼の回想

余裕ぶってベラベラ喋ったが、実際俺に余裕なんて何一つなかった。
あのクソ野郎、加減なく殴りやがって………。
線が細いなよなよ野郎かと油断したら、とんだチンパンだった。
最初の油断が尾を引いて、漸く殺せた時には歩くのがやっとの状態。
笑えねぇなと、サイレンの音と慌ただしい足音をBGMに深呼吸をする。
獣を殺るには銃が一番なんだなと納得しながら、さてどうするかと思案する。
警察犬持ってこられると勝ち目なんて消えちまう。
別に殺されても構いやしねぇが、まだ遊び足りない。
ヤりたい盛りなのよ、俺。
思春期だもの。なーんてな。

取り敢えずマンホールの蓋を外して、下水道の中へと逃げ込む。
大量のゴキブリが邪魔だが、ネズミよりマシ。
踏み殺しちまえば良いだけだからな。
ネズミ嫌いなんだよ。噛み付いてくるし。

みっともねぇ足音が、木霊して耳障りだ。
だがなんとなく、思いつく方向に進んで行く。
何故かは分からない。
けれどもそうしなきゃいけねぇ気がして、足を動かす。
ふと、あの日殺したあの女も、こうして足を必死に動かしてたなと思い出した。



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