「………じくん、耀司くん。」
「………ん?あ?」
康介が俺を呼ぶ声が聞こえて、目を開ける。
頭がぼんやりとしているし、出した声も少し掠れてしまっている。
………俺、もしかしてガチ寝してたのか?
「映画終わったよ。眠れた?」
「んっ………寝てたっぽい………」
ふわふわとした思考の中で、なんとか返事を返す。
少なくとも一時間以上寝てたのか、俺。
昼寝とかしたことねぇけど、意外と頭がすっきりするもんなんだな。
とはいえゆっくりと頭を撫でてくる康介の手が心地好くて、一瞬覚めていた眠気がまた戻って来てしまう。
「耀司くん。よーじくん。」
「んー………」
目の前の胸板に顔を擦り寄せれば、擽ったかったのかクスクスと笑い声が降り注ぐ。
それすら心地好くてうとうととする。
「お昼寝する?」
「したことねぇ、けど、時間がもったいねぇから、したくない………」
寝ると時間が早く経つ。
折角のふたりきりで長い時間一緒に居るのに、その時間を寝るのに使うのは普通にもったいない。
だが康介の声が、掌が、心地好すぎて起きていられない。
「勿体なくないよ。お昼寝も有効な時間の使い方だよ。」
そう言って康介が俺の頭を抱えるように抱きしめる。
苦しくもなく、寧ろ暖かさがヤバいくらいに気持ち良くて気が付けば俺も康介の腰を抱き寄せていた。
思えばこんなにもゆっくりとした時間を恋人と過ごしたことはなかった。
いつもデートの時はどこそこに行き、聞きたくもない仕事の愚痴を聞き、
気に食わない態度や行き先だと不機嫌になられてしまったから喧嘩になったりと………
勿論楽しかったこともまああったし、運転そのものも苦じゃないんだが、やはり気疲れすることが多かった。
「こーすけは?」
「耀司くんが寝るなら僕も一緒に寝るよ。一緒にお昼寝する?」
いっしょに………
それならいいかもしれない。
いっしょなら、おきてもねててもおなじだな………
「ねる」
「うん、一緒に寝ようね。」
こうすけのてが、おれのせなかをなでる。
きもちいい。
ああ、すきだな………
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